<隆太と坐玄>隆太視点
【予測不可能だからこそ】
すがすがしい朝。
東天伎武術学校の寮の一室で、いつものやり取りが交わされる。
「起きろー!」
俺はまだ夢の中にいる同室者をたたき起こす。
「・・・ウルサ」
お目覚め最悪、三蜂坐玄。俺の幼馴染だ。
せっかく毎朝遅刻しないよう起こすのに文句をたれる。
俺が布団をはがそうとすると、布団の端を掴んで縮こまる。ダンゴムシみたいだなといつも思う。
(こりゃ起きないな・・・)
いつもならこの繰り返しを3分くらい続けるが、今朝はそういうわけにいかなかった。
「はぁ・・もう知らないぞ。昨夜課題やっつけてて、今朝は俺も寝坊したんだ。お前に構ってたら俺まで遅れる」
こんなこと申告しても坐玄が聞く耳を持つわけがない。寝起き(というかまだ寝中か)だしな。
俺はため息をつき、「首ツルし頭痛えわ」と不満をこぼしつつ部屋を後にする。
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いつもより、短いやり取り。
この時、坐玄が上半身を起こし、俺の後ろ姿を見つめていたことなんて、俺は気付きもしなかった。
**
授業後、俺と坐玄は昼飯を食おうと食堂の列に並んでいた。
食堂はいつもにぎやかだ。疲れているせいか今日は少しうるさく感じる。
さらに周囲の視線が痛い。坐玄に対する視線が。
坐玄はさりげなく人気があるのだ。
そりゃ、目つき悪いが整った顔してるし、こんな男だらけの閉鎖空間の中で、こんな服の着方してたら変な気起こす奴も出るわな。
かくいう俺だって変な気を起こしそうになるが、あいつの表面だけ見てるわけじゃないし理性もあるし、奴らと一緒ではない!
・・・と思う。
一人で苦悶していると、周りの喧騒が急に和らいだ。
誰かが小走りでこちらに向かってくる。
一年生の吾妻だった。
「久遠先輩、三蜂先輩。滝山先輩から言伝(ことづて)を頂きました」
吾妻はいつも物腰が丁寧で、本当に感心する。さすが外交諜報班、といった所か。
「班長から?」
「はい。『至急別館へ来るように』とのことです」
「判った。どうもありがとうな、吾妻」
礼を言い、そのまま俺と坐玄は食堂から抜け出し、別館へと急いだ。
**
治療班には治療棟が、諜報班には諜報棟があるように、極闘にも拠点がある。
それが別館だ。
別館は学び舎から少し離れた所にある。一軒家の様で、趣を感じる庭があり、きちんとした垣根で囲まれている。
普段は俺達極闘が会議したり寝そべったりしているが、たまに国の重役をもてなしたりもする場所だからだ。
居間を過ぎ、普段寄り付かない奥の部屋へと足を運ぶ。そこには我らが班長・滝山先輩が待つ。
「二年、久遠と三蜂です」
「入れ」
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滝山先輩を前にしたこの緊張感は何ともいえない。他の先輩からは得られない、身が引き締まる思いがする。
いや、今のは別に極闘の残りの三年生ふたりに対する当てつけとかじゃない、と断っておこう。一応。
「急に呼び出してすまない。お主ら二人を呼び出したのは、任務のためだ」
「任務ですか。日時などは・・・?」
「今晩だ」
「「!」」
俺と坐玄ふたりして驚いた。
「驚くのも当然だ。任務は遂行当日の三日前までに告知せねばならんのが原則だからな。しかし今回は特例なのだ。
敵の情報を掴むのに今朝までかかったらしい。ウチの諜報班がそこまで苦労したということは、それなりの組織あるいは集団と考えていいだろう。
そこでこの任務、遠距離型と近距離型で協力・分業を当てにできるお主らに任せる。・・・頼むぞ」
「「はい」」
続く→